NHK 100分 de 名著 呉兢『貞観政要』 2020年 1月
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で、この貞観政要だが、解説しているのが元ライフネット生命創業者の出口さんというのもあって、経営者、またはリーダーとしてとても素晴らしいテキストになっているので、マネージャを自認する人は読んでみるといいと思う。個人的に刺さったポイントは以下のあたり。
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読書メモ
全体
読み方がむつかしい漢字がたくさん出てきて、辞書を引きながら読んだ
有益なフィードバックの重要性を感じる内容
中国史のことはぜんぜん知らないんだけど、キングダムを読んでいるので始皇帝のところだけオッとなる はじめに
一九七八年に、明治書院の「新釈漢文大系」というシリーズから『貞観政要』が刊行されることを知り(下巻は翌年刊行)、ちょうど会社で部下もできたことだしいい機会だ、これを読んだら立派なリーダーになれるかもしれない、などと思って読んでみました。以来今日まで、この本は僕の座右の書の一冊であり続けています。
あるとき、十七~十八世紀につくられたバイオリンの名器ストラディバリウスは、今もって誰も再現できないと書かれた本を読み、疑問を持ちました。ストラディバリウスを分解してその材料や構造を調べることもできるし、どんなニスが使われているのかもわかっている。それなのに再現できないとはどういうことだと。
第1回
上に立つ者の過失を遠慮なく指摘して忠告することを「 諫言」と言います。魏徴は、この諫言を仕事とする 諫議大夫 という役職に就きました。そして、李世民が誤った政策を進めようとしたり、リーダーとしてやるべきことをやっていなかったりしたときには、進んで忠告を行いました。こうした事情もあって、『貞観政要』でもっとも多く登場する臣下です。
2020 年の日本において、同じような意味でもっと通りのよい熟語ってあるかねぇ?
上司にダメ出しする担当
そして、周囲が寄ってたかって「あかん、あかん」と言い続けてくれる仕組みをつくることです。太宗がやったように、皇帝にダメ出しする役目を諫議大夫という職制として置くのも、リーダーが 傲慢 にならないための仕組みです。太宗は自ら心がけるだけではなく、自らがつくった仕組みによっても自分を律していたのです。
太宗はここで歴史に学んでいます。昔の王朝が滅んだ理由は何か。それは、リーダーである皇帝が自分の感情のままに振る舞ったからだ。だから国が乱れたのだと。そう結論した太宗は、自分もそうなるかもしれないから、どうかそのときには自分を諫めてくれ、と部下に言い渡したのです。そして部下にも、同じように他人の諫めを受け入れる姿勢を求めたのです。
「言ってくれたら聞くよ」よりもっと踏み込んで「どんどん言ってくれ」というスタンスだったっぽい
一方で僕は、「どんな組織もリーダーの器以上のことはできない」とも考えています。歴史を学ぶとそのことがよくわかりますね。ならば、リーダーの器を大きくすればいいと考えがちなのですが、話はそう簡単ではありません。なぜなら、そもそも人の器のおよその容量は決まっていて、簡単に大きくすることはできないからです。
自分の器を劇的に大きくすることはできない。しかし、器が大きくならなくても、自分の器の容量を増やす方法はあります。それは、器の中身を捨てることです。器に入っているものを全部捨てて、空っぽの状態にする。言い換えれば、自分の好みや価値観など、こだわっている部分をすべて消してしまうのです。自分が築きあげたと自負する仕事観や人生観、自分は正しいという思い込みなどを、いったんすべて捨てて、無にしてしまう。頭の中をゼロの状態に戻すことができれば、器が大きくならなくても、新しい考え方を吸収し、自分を正しく律することができるはずです。
器は大きくできない、空き容量を増やしたかったら中身を削除するしかない、ってのはおもしろい考え方だなあ
例えば、戦後の高度成長期には、やることを決めたらあとは「黙って俺に付いてこい」というタイプのリーダーでよかった。しかしアイデア勝負の現代に必要なのは、部下を自由にさせてアイデアを出させる、放し飼い型のリーダーです。
昭和のリーダー像、令和のリーダー像、みたいな話はあちこちで見かけるなあ
太宗は、肉親を殺して帝位に就いたというハンディキャップを克服するため、一所懸命理想的な皇帝になろうと努力しました。優秀な臣下たちを側に置き、自分を諫める役職まで新設しました。こうした努力と制度設計ができるのが、太宗の真にすごいところです。太宗は、自分の器をゼロにすることができたリーダーなのです。
フィードバックをちゃんと回収できる構造をつくれるのはすごい
もし今の自分がちゃんとフィードバックを取り入れようと思ったら、なにをどうすればよい?と考えるのは有益っぽい
第2回
前回、太宗は兄である皇太子を殺して帝位を 簒奪 したというハンディキャップを克服するために、一所懸命良い政治を行おうと努力したと話しました。太宗を駆り立てた背景には、「歴史が書き残される」という中国の特殊な事情があります。
一方、2020 年にもなって記録の改竄や破棄が疑われている国家があるとはね
僕は、人の上に立とうとする人間は、いつも元気で、明るく、楽しい表情をしているべきだと考えています。上司がムッとしていて、その職場が楽しくなるでしょうか、部下はのびのびと仕事ができるでしょうか。たまに「不機嫌にしているのが俺の役目だ」などとうそぶく管理職の人たちがいるようですが、僕に言わせればそれは愚の骨頂です。「そうは言っても上司が笑顔でいたら威厳が保てない」「規律が緩んで部下のミスが増えるかもしれない」などと言い張る人がいるかもしれません。それは威厳の意味をはき違えているとしか思えません。温和な笑みを湛えていても、威厳のある人はいくらでもいます。
はい
太宗にとって最大の「人の鏡」は魏徴でした。その魏徴は、過去の皇帝とその治世を観察するに、人民は君主の徳の高さによって平和に治まるが、なかなかその徳行を 完遂 できた君主はいないと述べています。そして太宗に、君主が心に留めておくべき十の思慮と、積むべき九つの徳行を説くのです。これが「 十 思 九 徳」と言われるものです。
魏徴は、 老子の「無為自然」という思想の中に、理想の君主のあり方を見出していたのかもしれません。無為自然とは、作為的に何かをしたり、干渉したりせず、自然体でいることの大切さを説く教えです。「君主は何もしていないのに、気がついたら、人々の生活が穏やかになっている」という状態が理想であり、策を 弄 せずとも、物事が自ずと良い方向に導かれるような政治を太宗に求めたのです。その鍵が、十思九徳をわきまえることでした。
第3回
組織はリーダーとフォロワーで構成されています。リーダーが努力するだけでは強いチームになれません。例えば、上からの指示がないと動けないようなチームは、強いチームとはいえませんね。そこには必ずフォロワーの力、すなわち「フォロワーシップ」が必要です。フォロワーシップは適当な訳語がないため、日本ではあまり広まっていない概念かもしれませんが、目的達成のためにチームメンバーそれぞれが発揮する力のことです。
「やっていき」と「のっていき」じゃん
総論で納得してもらい、そのあとは三段論法で自分の提言に同意してもらう。この手法は、王珪や魏徴たちが太宗に諫言をする際によく使われています。
へぇ、なるほどなあ
さらに、ここで改めて気づかされるのは、太宗と臣下たちが同じ書物をたくさん読んでいる、つまり「共通テクスト」を持っている、という事実です。「あの本にこう書いてあったでしょう」「そうやな」。これでコミュニケーションが成立しています。
これは現代でもそのまま言えそうなことですね〜
第4回
長く大手生命保険会社に勤めていた僕は、六十歳のときにライフネット生命という独立系の保険会社を立ち上げました。起業した理由は偶然です。 谷 家 衛 さんという若い人に出会い、保険のことを教えてほしいと 乞われたので教えてあげたら、「一緒に働きたいです、ゼロから生命保険会社をつくりましょう」と言われました。とても感じのいい人で、こんな人に頼まれるのも何かの縁だと思い、「はい」と答えてしまったのがすべての始まりです。
意外な軽いノリだった
これを言ったら嫌われる。これを言ったら上司は怒るに違いない。反対に、これを言っておけば上司の機嫌を損ねることはないだろう。このように感情をベースにしていると、物事の正しい判断はできません。フォロワーの側は、数字・ファクト・ロジックで正しいと思うのであれば、嫌われようが怒られようが、きちんと意見を主張すべきです。またリーダーの側は、フォロワーたちが意見を言いにくいと感じることのないよう、自分はみんなを信頼していると普段から伝え、率直な意見交換が奨励される環境をつくることが何よりも大切です。
そうすなあ
その上、官人たちの諸王に仕える者は、同一人物が長年仕えるようにしてはならない。長年にわたって仕えていれば、主君びいきの情が深くなり、思いもよらない身分不相応の野望の多くは、こうした関係から起こるものである。だから諸王府の官僚は、同一人が四年を越すことがないようにせよ。
これもすごいな、水はかきまぜ続けないと腐る
結局、太宗に次ぐ第三代皇帝には 李 治( 高宗)が就きました。太宗の九番目の男子です。この高宗の妻が、中国史上唯一の女帝となる 武 則 天 です。ここが歴史の本当におもしろいところで、太宗が後継者選びに失敗したがゆえに、後継者の妻の武則天という天才的な女性が歴史の表舞台に出てきた。旦那がいまいちだったばかりに彼女が能力を開花させ、大唐世界帝国の地盤を固めたのです。唐の地盤を築いたのが太宗と武則天であることは、疑いようがありません。
へぇ〜おもしろ
賢明なる君主は、それを実行することができる能力がございますのに実行なさらず、そのため、私ごとき卑しい臣下が、心が晴れずして長嘆息いたす理由でございます。(略) どうか、私のごとき愚者の考えの中にも千慮に一得があって、天子の御職責に少しでも補いとなる点がございますように。〔そのようになることができましたならば、たとい陛下のお怒りに触れましても〕死ぬ日が私の生まれた年であると考え、死刑に処せられても満足でございます。
殺されてもいいから思っていることを言います、と諫言できる諫議大夫すごすぎひんか? 僕がライフネット生命の社長、会長を務めていたときは、常勤監査役に魏徴の役割をお願いしていました。彼は年上で、僕のことを非常によく知っていた。ほかの生命保険会社の専務だった方で、保険に関する知識も経験も大変豊富です。しかも年功序列主義者で、僕に対していつも「俺のほうが年上だから言うことを聞け」と 諭してくれました。そういう人がいたからこそ、僕は十年、会社を経営してこられたと思っています。僕が大筋で道を誤らなかったとすれば、それはすべて常勤監査役のおかげです。
貞観政要から得た知見をちゃんと活かしていてえらい…! 巻末
電子書籍の中で「ハガキでご応募ください」と言われるの、不思議な体験だった
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